7月のある日の感想

すべてはオタクの妄想

朝のこないその日まで 黒埼ちとせと白雪千夜のこと

 

2/28にデレステに新しく登場したアイドル 白雪千夜と黒埼ちとせ

それと同時に開催されているイベント「Fascinate」について, 今の感想をまとめておきたいと思い記事を書きます

イベント「Fascinate」のネタバレ全開なので注意してください

 

 

 

 

……さま……お嬢さま、朝です。

んん……朝は毎日くるってぇ。

今日の朝日はいましか見られません。

……カーテンを開けますよ。

 

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[Fascinate]白雪千夜 / ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

 

メイド風の服を着た白雪千夜がカーテンを開け, 黒埼ちとせを起こす 

何気ない朝のシーンからイベントが始まります

 

千夜はちとせの家に仕える使用人で, 2人とも最近アイドルとしてデビューしたものの, 具体的な活動はまだしていません 

ちとせが街中でPと出会ってアイドルになることを決め, その後ちとせにオーディション会場に行くように言われた千夜もそのままアイドルになったという経緯があります(個人コミュ1より)

 

そんな2人が事務所に行くと, (例のごとく)Pが2人にこれからユニット活動をしてもらうことを告げます すると千夜は

それは、ダメです……。

 (中略)

しかし、よいのですか。私で。

私のような価値のない人間で……。

 と, 従者たる自分には, 華やかなちとせと並んで立つような価値はないと断言します。ちとせに従う形でユニットを組むことになる千夜ですが, それはあくまでもちとせがそう望むからという理由によるものです

 

幼い頃、私の夢は……

夢は、何だっただろう。

ずっと前から、夢を見なくなった。

自分では終わらせることが許されない、

灰色の現実を塗り替えていく日々。

夢を見ることが許されるのは、

華やかな人生を送る人だけと決まっている。

それならば、私はせめて華やかな人生を支える人でいたい。

 

自分は、何物にもなれると思っていた。

だって、私は私だもん。人がうらやむ容姿、恵まれた家柄。

欲しいものは全てこの手にある。

だからこそ、私は私ひとりで幸せにならない。

夢が1人1つではいけないなんて、誰が決めたの?

でも……世の中って、そんなに簡単じゃないんだよね。

 

それぞれ, 1話冒頭の千夜と、2話冒頭のちとせの独白です

 

千夜は, 12歳の時に家族を亡くして黒埼家に引き取られたことが語られます

そのことについて直接詳しく語られることはないものの, 5話冒頭では

たまに見る夢は、炎が荒れ狂う夢だった。

たいせつなものが、燃えていく夢。              

私の全てを焦がして、焼き尽くす。

 という回想があります

全てを失った千夜はちとせを支え, 全てを持つちとせは千夜に与えてきた

それは決して平等な関係ではなかったけど, 千夜はそうすることで初めて自分の意味を確かめることができていました

 

しかし, その関係は永遠には続かない

2話のレッスン中に倒れたちとせ よくあることだから...と体が弱いという描写が続き, 体を激しく動かすダンスは千夜がメインに行い, ちとせは歌唱に力を入れるという役割分担が決まります

これを読んでいる段階では, こうやって一歩的にちとせを支える関係から, だんだんと対等な関係になっていく成長が描かれていくのがテーマなのかな...などと考えていました。

 

しかし, Pと二人で夜の街を歩いているとき, ちとせはこんなことを言います

私ね。長くないと思うの。だから、今が楽しければいい。

たぶんアイドルとしても、ハードなお仕事はできないでしょ?

 

.......................................................。

この言葉によってこの物語の始まりである, なんでもない朝の会話が一気に重い意味を持つ場面になりました。

このちとせの告白よりちょっとまえの4話冒頭のモノローグで, ちとせはこんなことを言っていました

幼い私は、いつも夜が嫌いだった。

眠りについたら、もう目覚めない……そんな気がして。 

だから, ちとせは夜散歩に出かけるのだと

 

ちとせの朝はもしかしたら明日にも来なくなってしまうかもしれない

だから千夜は毎日本当は苦手な早起きをして(趣味:睡眠), ちとせを起こして, 今日もお嬢さまに朝が来たことを確認している

そして, 今日も自分の存在に意味があることを確かめているのでしょう

 

ちとせはPにこう続けます

だけど、千夜ちゃんは違う、あの子には未来がある。

 ちょっと口下手だけど……本当は、優秀でいい子なんだから。             

それに、笑顔は世界一可愛いんだから。              

 ……あなたが可能性を引き出して。           

千夜ちゃんを私の僕ちゃんじゃなくしてあげて。              

 

私がいなくても, 千夜ちゃんが意味を見つけられるように...

 

 

だから, そう遠くはないその日までに千夜が変われるように, 2人には魔法が必要だった

12時までの魔法で人生を変えたシンデレラのように

 

終わりの鐘が鳴るその時までに, 12時過ぎの魔法を探す  それが2人のアイドル活動になるのでしょう

 

 

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と, ここまで書いてほとんど引用になってしまったんですがそれだけ今回のテキストは(少なくとも千夜とちとせのやり取りに関しては)丁寧に書かれているという印象を受けました

 登場時点で何かと異例の2人なんですが, そのキャラクターとしての在り方も, シンデレラガールズとしては異彩を放っています

やはり1番は未来がないというちとせ アイドル活動を通して, なりたい自分に近づくというのが王道であるはずなのですが, ちとせにその将来はありません だから, 彼女にできるのは今を華やかに生きること そのために, Pはちとせに魔法をかけました

一方で, シンデレラガールズはいわゆる"サザエさん時空"の物語 必ずやって来る最後への物語を, 永遠に止まった時間の中で描くという挑戦になるわけで, これからのシナリオをどうしていくのかが気になります (何もかも異例なのでもしかしたら最期を描くなんてこともあるかもしれないという覚悟はしておきます)

そして夢がないという千夜もシンデレラガールズの中では特異な存在です 夢は夢で終われないとお願いシンデレラも言っているわけで, そのアイドルがどんな夢を持っているのかというのはこれまでのキャラクターを位置づける重要な要素でした 

しかし千夜は自分が夢を見る資格さえないと考えています これからいろんな夢をもつ人々と触れ合っていって, 時には夢を与える存在になるかもしれない その中で自分の夢を持つことができるのか 今のところ本人は夢を持ちたいとさえ考えていませんが, 彼女の心境がどのように変化していくのかを見守っていきたいところです

 

これから2人がどう描かれていくのは分かりませんが, それは最期の日までの期間限定の物語

その日の朝に, 白雪千夜はカーテンを開けて眩しい光から目をそらさずにいられるようになっているでしょうか