黒埼ちとせは恋をしない
大仰なタイトルをつけましたが、先日登場した限定SSR [千年の誓約]黒埼ちとせ の感想をまとめておこうという記事です。ネタバレ全開なのでご注意ください。
ちとちよってなによというのは一応登場時に書いた感想文があるので以下参考までに(あとから結構間違いも分かった)
some-day-in-july.hatenablog.com
大切なことはいつも親愛度セリフに...
いきなりですが、特訓後親愛度MAXセリフを見てほしい.....
このゲームの大事なことのほとんどは親愛度セリフにあります。多分。
ここでちとせは2つのことを言っています。
・強くない私をこれからも守ってほしい
・私と千夜ちゃん、そして私と貴方の間には本物の愛がある(そしてそれは恋愛ではない)
それぞれ見ていきましょう。
魔法をかけるだけじゃなく
まずは前者から。
黒埼ちとせは、白雪千夜の存在が前提にあるキャラクターです。2人の中で関係性が終結しているように見えて、Pの立ち位置が読み取りにくいということはあったと思います。
これまでPの役割として明確に語られていたのはまさに「魔法使い」、すなわちちとせと千夜をアイドルに仕立て、刺激的な仕事を用意することでした。
「次はもっと楽しいお仕事を持ってきてもらおうかな」(N+親愛度MAX)
「私と千夜ちゃんに魔法をかけて、えらい♪」(Fascinate 親愛度MAX)
「この物語がハッピーエンドになるかをきめるのは、あなた」(緋薔薇の令嬢+ 親愛度MAX)
体が弱いことを告白しながらも、残りの人生で、あなたは私に何を見せてくれるの? と余裕のある態度を見せていたちとせ。
そんな彼女がここでは「私は強くないから」と弱さを見せ、「貴方が受け止めてくれるよね」と自分のことを守ってほしいという願いを口にしています。
ここからは妄想ですが、ちとせの言葉がここにきて変化した理由を考えてみます。
特訓前親愛度MAXでウェディングドレスを着たちとせがこんなことを言っています。
「もう何年も、忙しくて......そう、忙しかったの。だから忘れてた」
この忙しかったという言葉には、千夜ちゃんにいろんな世界を見せてあげるために、実際に忙しかったということも、限られた命のなかでそれを達成しなければならないことに焦りがあったということも含まれているように思えます。
そして、このウェディングドレスの仕事をきっかけにいま、自分の幸せを顧みることができたと語っています。
これは語られていないので完全に妄想ですが、この気持ちの変化の背景には、千夜ちゃんがアイドルという生活に自分の役割を見つけつつある――ようにみえることがあるのではないかと想像します。例えば千夜の最新のカードである[ひとり、時は過ぎて]では
「今更、心配しているのですか。...仕事はこなします。問題ありません。」
というホーム画面セリフがあります。
これは千夜がちとせから離れつつあるという意味では決してないことに注意が必要ですが、それでもちとせに言われるままにオーディション会場に来た当初とは仕事をすることの意味が異なっているのは確かでしょう。そして、もちろんちとせはそれを感じているはずです。ちとせ本人はそれを負担とは言いませんが、心のスペースにほんの少し余裕ができたのではないでしょうか。
千夜の活躍が先行したとき、私はちとせが心の隙間に寂しさを感じるかもしれない、と想像していたのですが、今回のブライダルの仕事がタイミングよく、その隙間を埋める形になったのかもしれません。
ちとせにとってウェディングドレスは、本来であれば決して着ることのなかった衣装です。それをアイドルの仕事を通して着ることができた。このことがちとせに、限りある時間のなかで、ひとなみの命があれば当たり前にあるはずだった幸せに少しでも手を伸ばしていきたいと思わせるきっかけになったのではないでしょうか。
そうだとすれば、ここで、ちとせがちとせのためにアイドルする理由が明確になりました。すなわち一生分の幸せに、今この瞬間を伸ばすことです。だから、「私は強くないから」も「貴方が受け止めてくれるよね」も、ちとせが両手を広げるために必要な言葉だったはずです。
Pはもはや、ただの魔法使いではいられません。ちとせがちとせの幸せに、千夜が千夜の幸せに、自分で手を伸ばすために、彼女を守り続ける。白銀の指輪とP自身が選んだウェディングドレスは、その新たな契約の証であるといえるかもしれません。
黒埼ちとせは恋をしない
画像が上の方に行ってしまったので、親愛度セリフの後半を再び引用します。
この胸の温かさは、私のこの気持ちは、本物。
人と人のあいだには、愛があるもの。恋愛だけが愛じゃない。
あの子とのあいだにも、私と貴方のあいだにも......愛があるから。
難しいですね......愛と恋.....
定義にはそれぞれの哲学があると思うのですが、文脈で考えて(妄想して)みます。
「この胸の温かさ」というのはその前の、ちとせがPに守ってほしいと思うこと、Pがちとせのことを守ってくれること、それに対してありがとうと思う気持ち そういったものを指していると考えていいでしょう。
ちとせと千夜のあいだにあるのも、あなたを支え、守るという気持ちです。
そして、ここで重要だと思うのが、こういったちとせの思いが、「今」に対する感情だということです。
「相手のことをもっと知りたいと思うのが恋である」という言葉をよく聞きますが、恋愛は未来に対する期待であるといえるとすれば、ちとせに恋をする猶予はありません。今を生きるために守ってもらいたい、今を生きてもらうために守ってあげたい、そういった気持ちこそ、ちとせにとっての「恋愛だけじゃない愛」なのではないでしょうか。
ちとせと今を生きること
Pとアイドルの関係性はそれぞれ違っていて、ときに恋愛に近い表現になっている場合もあります。そんな中ではっきりと「恋愛とはちがった愛」という表現がされたことに驚いたのですが、今と未来という視点で考えると、そりゃそうだよね...とも思えます。いずれにしても、今回のSSRでPとちとせのかかわり方がはっきりしたのは(メタ的にも)大きな進展だと感じました。
Pちゃん、ちとせさんの「今」を頼んだ...という感じです。
それはそれとして今輝けば輝くほど、遺された人たちに残る爪痕は相当なものなのですが......
個人的にはいつか、千夜ちゃんとちとせ自身について話す機会があればいいな...と思っています。2人がそのことをはなせるようなアイドル活動になればいいな...と思っています。
最後まで描いてくれ...シンデレラガールズ...
「夜の風が気持ちいい...月の光も妖しくて......私、今を生きてる」(ホーム台詞より)