7月のある日の感想

すべてはオタクの妄想

映画『ニセコイ』―小野寺小咲派としての目線で

これはニセコイについて書く上で最初に言っておかなければと思い書くのですが, 私がニセコイで一番好きなヒロインは小野寺小咲です....はい........

ということで, 発表当時は絶対観に行かないだろうと思っていた実写映画「ニセコイ」を観に行ってきました 知人から思ったより楽しめたということを聞いてたのと, 原作エンドに対する未練を断ち切る機会になるかもしれない, という思いが湧いてきたからです

結論から言うと, 悪くなかったし観てよかった

漫画原作実写化映画の例にもれず, 批判を受ける部分もあるとは思うのですが, 私は批判するほどの知識もないので, 楽しめたこと中心に書いていきたいと思います(ネタバレ注意です)

 

 

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©2018映画「ニセコイ」製作委員会 / nisekoi-movie.jpより

原作について

 なぜ今回の映画を楽しめたのか, ということにも関係してくるので, 原作に対する思いをはじめに

まず言っておきたいのは, 千棘は魅力的なキャラクターだし, 楽が千棘のことを好きになるのも十分わかる(物語の展開としても)ということ, そして楽と6人の女の子それぞれのシーンが描かれるからこそニセコイは魅力的な作品だったということです

それでも, やっぱりつらい 

小咲と, 小咲のことを好きな楽に完全に感情移入して作品を読んでいた私は, 分かり切っていたはずのエンドに多大なダメージを受けてしまったのでした

なんでこんなにダメージを受けたのかと考えると多分

・小咲がとにかく健気

・楽の小咲に対する態度が常に思わせぶり(好きだからあたりまえだけど)

というところ

ちょっとでも小咲に嫌な部分があったら, 楽の気持ちが小咲から離れていく様子が描写されていたら, 少しは結末に納得できたんじゃないかな...

小咲はなにも悪いことをしてないのに, これじゃああまりにもかわいそうだ, という未練を残してこれまで過ごしてきたわけなのです

 

映画ニセコイ~楽と千棘の恋物語~

一方で今回の映画, ストーリーが楽と千棘の関係性に絞られて描かれています

まず, 春と羽は登場しません そしてはクロードとともに全編にわたって出演しているものの, 台詞は数えるほど あくまでクロードの腹心という描かれ方をしています 短い尺の中で話をまとめるためとはいえ, これは3人のファンにとっては残念...

万里花は, 楽のことが大好きなロマンチストとして原作通り場面を振り回すものの, 楽と2きりのシーンはなく, 病気についても, 再会の場面で過去のこととして触れられる程度になっています(あの結婚式エピソードもありません)

 そして, 小咲と楽の関係性も原作とは異なった描かれ方をしていました

憧れとしての小野寺

映画での小咲は, 楽にとってあくまで"憧れの同級生"であるように感じました  楽が小咲のことを好きなことには変わりないんだけれど, それはどこか距離感があって, アイドルに対する感情のような"好き"なんです

 今回映画に採用されている大きなエピソードは, 林間学校(肝試し)と文化祭(ロミジュリ)なのですが, 肝試しで一緒のペアになるまで, 楽と小咲が2人で会話する場面はありません  さらに, 肝試しでは2人が手をつなごうとする寸前に, 千棘が行方不明であることが分かり楽が捜索に行ってしまいます 結局, 楽と小咲の距離は縮まることのないまま文化祭, そしてラストを迎えることになるのです

ちゃんと数えてはいないけれど, 楽と小咲が会話したシーンって全体でもほとんどないんじゃないかな.... だから, 観客にとっても小咲は, 美人だし性格もよさそうというふわっとした印象で, 原作ほど魅力的すぎることがないようになっています 小野寺小咲の魅力が伝えられていない, と言ってしまえばその通りなのですが, これによってこのお話が楽と千棘の恋物語であることがすっきりしています

そしてなにより, 楽の心が小咲から千棘に移っていくのが分かりやすく描かれることによって, 観ている私もそんな楽に感情移入しやすかった, 小咲が選ばれないことに納得ができたという点において, 映画での変更はいい方向に働いたのではないかと思います

 

ロミオとジュリエット

 映画での文化祭はこの物語のクライマックスであり, 原作のエピソードにラストのエピソードを混ぜたような作りになっています(以下物語の核のネタバレになります)

 

 

 

一度はジュリエット役に決まった千棘だったが, 小咲が楽の思い出の相手であり, 今も楽を想っていることを知ると「ニセコイ」の真実を明かし小咲にジュリエット役を譲る 

しかし, 当日小咲がケガをしてしまい千棘が再びジュリエット役に, 演技の中で楽は千棘への想いに気づく 

終了後, 学校の屋上で小咲は楽に約束の鍵を見せて告白するが, 楽は千棘のことが好きだと想いに答えられないことを告げる

その後千棘が見当たらないことに築いた楽は先生から, 千棘がアメリカに帰るのだということを聞き, 空港へ向かう......

 

もう一つ大きな変更としては, 楽と小咲の思い出の絵本がロミオとジュリエットの絵本になっており, それを覚えていた小咲が文化祭の企画として, ロミジュリ劇を提案したという形になっています

 集英組とビーハイブ, 対立しあう2つの組織の間の恋人同士の物語は, 自然にロミオとジュリエットに重なります  この劇を, 映画のクライマックスとして持ってきたのは2時間で「ニセコイ」を描く上でベストだったのではないでしょうか  

ところどころの改変もそれぞれいい方向に働いていて, 小咲が怪我をした際に千棘に役が回ってくるのも, 練習をしており台本を覚えているのは千棘だからという納得しやすい理由付けがされています  また, 千棘に代役を頼むのは楽だけではなくクラスメイトみんなであり, 最後は小咲からのお願いの言葉が決め手になっています  このおかげで小咲の不憫さが軽減されていて, 小咲ファンとして, 優しい構成になっていると感じました

劇中, 千棘扮するジュリエットはアドリブで「あなたには運命の人がいるのだから, その人と幸せになって」とロミオから取り上げた毒瓶を奪い, 先に命を絶ち, ロミオ(楽)は「天国で一緒になろう」と短剣を自身に突き立てます  このセリフも, 楽が約束の, 運命の相手でである小咲ではなく千棘を選ぶことを表しているとともに, ロミオとジュリエットの命題ともいえる"運命"に逆らうのだ とも捉えられて素晴らしい演出だったのではないでしょうか

 

小咲の告白

そして, 終演後の小咲の告白へと物語がつながります このときの小咲はもう, 直前の演技を見て, 楽の千棘への想いに気づいていました だから, これは最後のチャンスではなかった もう小咲にはチャンスがないことが分かった上で, 告白に臨んだわけです

だから, この告白は最初から, 楽への気持ちへの別れの言葉だったのだと思います 約束の相手は自分だったけど, 一条君は今の自分の気持ちを大事にして欲しい という

思えば映画では小咲が楽と千棘の間に割って入る隙間なんてなくて, 最初から最後までノーチャンスでした だからこそ, 小咲も観ている私もどこか晴れやかな気持ちでラストへ向かう楽を見送ることができたのではないかなと思います

 

演出面について

ストーリーについてはここまでにして, 演出面について

ジャンプの漫画なので当然なんですが, ニセコイの設定はぶっ飛んでいます 極道やらギャングやらが街で闊歩したり, 学校の中で銃声がなったりするわけです その一方で舞台は普通の街であって, ファンタジーの世界ならまだフルCGとの合わせ技でなじませることができるのにそれができない

そこでこの映画は序盤を完全なギャグ調にすることで解決しようとしています 派手な文字カットインだったりやりすぎなBGMだったり 制服や教室も現実の高校にはありえないようなデザインになっています

 最初はやりすぎだろ...と思ってみていたのですが, 演出が落ち着いてきたなと感じた頃にはショック療法(?)のおかげか実写「ニセコイ」の世界になじんでいる自分がいました 丁度そのころからストーリーも本筋に入っていくようになっており, やりすぎという批判は予想されるものの, なるほど...となる演出だったと思います

 

役者さんについて

 特に原作の雰囲気そのままに, いい味を出していたと感じたのはクロード(DAIGOさん), るり(河村花さん), 集(岸優太さん)でした 楽の成長のために欠かせない役割のクロードですが, ここまでかっこよく演じられるのはDAIGOさんならではだろうなあ...

るりちゃんは台詞こそ少なめですが, 雰囲気がそのままるりちゃんでした るりちゃんが小咲を応援することも, セリフとしてはほとんどないのですが, 踏み出せない小咲を見つめる目線が良く出ていたと思います

集については, こういうやつクラスにいそう, というところと, 舞子集のイメージの両方をうまくカバーする演技だったと思います 先生との恋の話とか, るりちゃんとの絡みはカットだったので, 観たかったなあ...

千棘役の中条あやみさんは, 金髪+赤いリボン+暴力的ということで難しい役ではあったと思うのですが, ロミジュリの結婚式のシーンなんかではすごくきれいでしたね  エンドロールに撮影の様子が流れるのですが,楽に膝蹴りを入れる最初のシーンは実際に釣られて撮影していたようです

 小咲役の池間夏海さん, 公式サイトの古味先生のコメントにもありましたが, かわいらしさが十分に出ていたと思います 演技されているところをみると,多分キービジュで見るよりも小咲らしさを感じることができるのではないかなあ

万里花役の島崎遥香さんは, さすが元AKB, とても可愛い オレンジの髪色でも浮いて見えないのはすごいです(千葉県のYさんも可愛いと言っていたという情報もありましたね)  私は博多弁判定ができないのでそこは分かりませんが, ロマンチストかつ押しの強い万里花を見事に演じていたと思います

鶫役の青野楓さん, アクションがメインですが鶫のかっこよさがでていました 願わくばしゃべっているところを見たかった...

 

まとめ

ということで, 漫画原作, 特にジャンプラブコメの実写化映画ということで, 評価を得にくい作品ではあると思うのですが, 少なくとも私は見てよかったと思える作品でした

ヒロインを千棘1人に絞って描くことで, 楽はこんな風に千棘に惹かれていったのかと, 楽の気持ちになりながら再確認することができるストーリーになっていると思います(千棘と楽のエピソードについてあまり書いてないけど)

原作で小咲の魅力を知って, ラストにもやもやしたからこその映画の魅力があって, これってちょっと矛盾してますね... 

小咲の出番が減ったからこそ, 小咲ファンにとって優しい, そんな作品でした